電子マネー/電子決済という言葉が数年前から広がりはじめ、「Suica」や「ICOCA」などの交通系ICカードや「楽天Edy」、「WAON」などの支払い系電子マネー、「Apple Pay」や「Google Pay」,「おサイフケータイ」などのスマートフォンアプリや、「楽天Pay」「PayPay」「Line Pay」などのQRコードを利用したモバイル決済サービスなど「キャッシュレス」決済が飛躍的に普及しはじめています。
平成28年総務省発表の家計消費状況調査によると、電子マネーの保有世帯率は約50%で、保有世帯は年々増加しています。しかし、キャッシュレス決済全体を見てみると2016年時点ではキャッシュレス決済比率は約20%で世界の先進国の中でも低い水準であり、日本政府は2025年までにキャッシュレス比率を40%までに、また将来的には80%まで高める方針を掲げています。
そこで、今注目されているキャッシュレス決済についての利用調査(引用)から、写真館での利用の可能性について分析してみたいと思います。
【キャッシュレス決済のメリットとは?】
まず、そもそもなぜキャッシュレス決済が注目を浴びているのかですが、簡易的にまとめると以下のことが挙げられます。
◆導入店のメリット
①レジ業務の簡素化により人手不足問題を抱える実店舗の省力化
②現金資産の見える化
③支払いデータの活用により消費の利便性向上
◆消費者のメリット
①支払いの利便性向上
②ポイント等付加価値がつく(決済方法による)
日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」によるとキャッシュレス決済を利用する人で決済時に重視する内容として最も割合が高かったのは「ポイントや割引などの便益面」でした。昨今では決済方法でも消費者に対して価値を提案する事がニーズとして顕在化してきていると考えられます。
【キャッシュレス決済の利用で客単価はどうなる?】
日本クレジットカード協会が実施した調査によるとクレジットカードでの支払いは現金での支払いと比較するとく客単価が1.7倍高い傾向があることがわかりました。
写真館でお客様が商品のプラン(価格)を決める際、支払いを現金でするか、クレジットカードでするかでプラン内容が変わることを感じたことはないでしょうか?クレジットカードを始め,キャッシュレス決済だと手元にある以上の金額を支払う傾向があるようです。
実際に1万円までの少額の買い物をする場合は現金を使う人の割合が高く、1万円以上からクレジットカードを利用する割合が多い調査結果があります。
写真館では少額だとDPEも兼ねる業態であれば1枚からの写真プリントや証明写真、また高額であればスタジオ撮影、アルバム/台紙販売といった価格帯があるかと思いますが、価格帯に応じたキャッシュレス決済方法により現金決済ではなかった価値(特典)をお客様へ提供できるかもしれません。
クレジットカードはもちろんのこと他のキャッシュレス決済で注目したいのは実は利用率が現状一番低いスマホのQRコード決済です。QRコード決済は少額利用、高額利用ともに上昇していくであろうという見方もあります。理由としては実店舗と消費者へのメリットがクレジットカードよりも影響が大きいと考えられています。
◆実店舗へのメリット
①導入ハードルが低い:クレジットカードや電子カード、またスマートフォンの接触型決済のように高額な専用機器が必要なく、QRコードを提示するタブレット端末などがあれば導入できる。
②レジ業務の省力化
③手数料、運用費が比較的低コスト
④インバウンド需要にも対応可能(お客様側は海外でも使える)
◆お客様へのメリット
①スマートフォンの機種に依存しない
②ポイントなどの特典がもらえる(QR決済提供サービスによる)
これらのメリットによりますますキャッシュレス化の波は大きくなり市場規模も拡大する見込みです。QRコード決済の市場規模は6千億円程度で、2023年度には8兆円とも推計されています。東京五輪のインバウンド需要や政府の後押しもあり、市場は拡大するようです。キャッシュレス決済の用途はまだ交通機関やコンビニ、スーパーマーケット、飲食店など生活に必需なところでの広がりではありますが、写真館や出張撮影でもQRコード決済のように新しい決済方法の利点を活かせれば、より多くのお客様に時代にあった利便性をお届けできるのではないでしょうか。
【データ出典・参考】
・総務省:家計消費状況調査(平成28年)
・日本銀行 決済機構局
・日本クレジットカード協会
※ラボネットワークメールマガジン2019年3月号の記事を再掲