デジタル出力:池田 博氏 #3

アナログプリントからデジタルプリントへの移行

写真フィルムや印画紙はアナログですが、そのフィルムから印画紙に焼き付けるラボ機器も次々とデジタル化されてきました。最初はアナログプリント時の露光制御のため、フィルム濃度を測定するためにCCDセンサが使われアナログからデジタルへの移行が始まり、直接フィルムをイメージセンサでスキャンしたデータを印画紙の焼き付け(レーザー、電子シャッタ、DLP等)へと進化していきました。
現在、商業用の印画紙プリンタはほぼ全てデジタル化されており、引き伸ばし機による手焼きはできるものの、以前の様なフィルムから印画紙への大量露光機器は無くなってしまいました。

LNWの生産拠点であるラボ生産内のプリンタも、現在は全てデジタルプリンタとなっています。

過渡期には写真フィルムをスキャンし、デジタル化するフォトCDのサービスやデジタルデータをネガフィルムに焼き付ける装置等もありました。

写真フィルムのスキャナやフォトCDは保存していたフィルムのデジタルアーカイブに寄与してきました。
デジタルデータをネガフィルムに焼き付ける装置は、デジタルの印画紙プリンタが普及する前には結構使われていました。特に写真のポストカード等では使いやすかったと思います。

デジタル出力機

最近は誤解する方もだんだん少なくなってきましたが、デジタル写真の誤った情報として、カメラも出力機も解像度が高い方が高性能という認識です。

この認識を改めるべく、ISO(International Organization for Standardization 国際標準化機構)の技術報告書(ISO/TR 20791-1:2020)にも「dpi(ドット数/インチ)の値がプリント品質を表すものではない」と記載されています。
インクジェット(以下IJと略)と電子写真(ゼログラフィー)は階調と色を複数のドットで表す面積変調、銀塩及び昇華転写は階調と色を単一ドットで表す密度(濃度)変調であり、濃度変調は面積変調に比べて低いdpiでも高分解能になります。

銀塩(印画紙)のドットサイズは、約0.1〜5μm(μm=1/1000mm)、IJの1200dpi等の表記はあくまで印字ヘッドでの解像度になり、紙に印字したときのドットサイズはヘッドから射出されたインクが紙の表面で広がるため、30〜200μmになります。
銀塩印画紙や昇華転写方式の出力紙は、縦方向に色素があり、1ドットで濃度変化が可能です、一方IJや電子写真(複写機やレーザープリンタ等のことを言います)は色素を平面にのせるので、面積による濃度変化となります。
そのため、1200dpiのインクジェットプリンタと300dpiの銀塩プリンタでは、数値の表現上では銀塩プリンタの方が劣っているように感じますが、画質的には銀塩プリンタの方が有利になります。
銀塩プリンタは1ドッドずつの印字に対し、IJは一定面積の印字となるため、中間調は誤差拡散法やブルーノイズマスク(ディザ)法という処理を経て印字されます。商業印刷のプロダクションプリンタでは、同時にモアレ等を防ぐために網点処理が施されるのが普通で、プリントはグラビア印刷の様になります。
最近では、IJや電子写真はYMCKの4色ではなく、複数色用いることによって、中間調の再現を向上させているようです。

銀塩印画紙は、このように濃度変化が極めて繊細にコントロールでき、階調豊かな表現ができるため、今後もプロ写真を中心に継続的に使われるでしょう。

これらのことから、入力の解像度をいくら高くしても、出力側が対応できていないということが良く分かると思います。

そのため、スナップ写真等、大伸ばししないプリントは適正な画像解像度でハンドリングする方がデータ量も少なく、扱いやすくなります。

画像保存性

画像保存性においては、銀塩の色素はゼラチン層内に固定されており、かつ色素を安定保存するための物質も内包されているため、比較的堅牢です。IJや電子写真は、紙の上に色素がそのままのっているだけなので、保存性を向上させるためには後処理が必要となってきます。
銀塩は、普通にアルバムに貼って閉じた保存状態(暗退色と言います)では、約200年はカラーバランスが崩れないとされています。印字後、何も処理しないIJや電子写真はここまでは持ちません。

色再現性としては、銀塩は限られたYMCの色素で表現しているので、色域としてそれほど広くありません。インクやトナーの選択肢があるIJや電子写真の方が色再現閾(いろさいげんいき)としては広くなってきています。

写真の色空間としては、ラボで使われている写真機器はほぼすべてsRGB準拠となっています。実際にはsRGBの色閾(しきいき)よりもかなり狭く、色の方向がずれないようにプロファイルとかLUTを使ってマッピングをし直してから印画紙にプリントします。
そのため、写真のラボにプリントを発注するときには必ず色空間はsRGBでデータ作成していただくようお願いいたします。

銀塩は、画質・保存性で現在も有意な状況にはありますが、現像処理含めてかなり多種多様の化学物質を使っているため、現在原料の製造も限られており、時代の流れでだんだんシュリンクしていく方向は否めません。

現在は、データはデジタル化されているので、鑑賞はそのままディスプレイで行い、ハードコピーが欲しければ、保存性に関わらず都度出力できるIJや電子写真でも問題ない状況になりつつあります。
今後はさらに技術開発が進み、IJや電子写真に置き換わっていく方向かと思われます。


次回以降もよろしくお願いいたします。

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