LNWラボにおける技術教育
ポートレートプロラボに必要な品質の定義
はじめに、ポートレートプロラボに必要な品質の定義を銀塩ブライダルアルバムを例にとってお話しします。
- 製本や梱包出荷のような物理的品質
キズや折れなど目視や計測器で測定できる品質。
これは正しい作業標準を全員が遵守する事で担保でき、この作業標準書はラボのバイブルです。 - プリントされた写真の品質
これをラボでは官能的写真品質と称しています。
写真的管理には2種類あり、今回の連載主題であるジャッジ品質です。
※アナログ時代、フジ系ラボはアマチュアラボではジャッジ(検定)、そしてプロはモニターと呼び、コニカラボではジャッジ~デジタル時代には画面を活用するのでモニタージャッジと呼んでいたようです。
現像管理の重要性
加えて重要な管理ファクターは現像管理です。
発色現像~漂白定着の2ステップで処理される現像処理は、精緻な化学反応で成り立っています。
デジタル時代では、プリンタキャリブレーション操作することで見かけ上は問題なく出力されるとの安易な考えが一般化していますが、プロ品質出力において画像形成の基本となる現像管理はますます重要です。
既に感光材料メーカーに深い知識をもった過去の技術者がいなくなった現在、ラボ内部の独自研究や社内教育が重要になっており、LNWプロラボはそれを継承発展させている数少ない企業であると断言できます。
画作りや写真的センスの教育
ラボ技術者の貴重さ
先に述べた計測器で測れない官能的品質をいかにして後進のラボ技術者に伝え教えていくか?ラボにとって大きな課題です。
例えば、Photoshopでレタッチ(写真修正)ができる人材は外部にあまたいらっしゃいます。しかし、銀塩出力を前提としたシビアなジャッジが可能な技術者は、ラボ企業にしか存在しません。
過去45年の経験上、他のラボからLNWを選んで転職してくれた仲間以外にジャッジ技術者には出会いませんでした。
LNWの教育プログラム
ジャッジ技術者は自前調達(教育育成)が基本で、LNWには各種教育プログラムが用意されています。
その一環でリモート画像添削とZoom個人レクチャーによるジャッジ技術者養成を担当していますが、在職時代後期12年~介護退職後の4年とずいぶん長い期間継続できていると思います。
プロラボジャッジ教育において大切なこと
指導者としての姿勢
前提として、指導者たる私の自己研鑽姿勢が重要で、日進月歩のデジタル技術~カメラ機材の進化、アプリケーションの進歩など最新の情報を学ぶ事がデジタル時代を楽しむ秘訣です。
熟練者ほど最新技術に触れるべきというのが私のポリシーで、キーワードは『情熱と興味津々』。
初見(FirstImpression)
ジャッジ教育実務について最も大切にしているファクターは初見(FirstImpression)です。つまりお客様から頂いた入稿画像を観察解釈し、撮影意図をくみ取ります。
これを実現するためには、デジタルカメラ知識やスタジオライティング、そしてRAW現像などの深い洞察力が必要になります。
そして、撮影者がひいては写されたお客様に喜んで頂ける写真表現とは何か?を具体的にイメージします。これを間違うと良い補正結果は得られません。
同じ補正を実現できる実技
次のステップは、同じソフトウェアで同じ補正をコンスタントに実現できる実技を教えます。デジタル写真はロジック(論理)で構築されているので、誤った操作ではかえって画像を破壊します。
ラボとして目指しているのは『美味しい金太郎飴』です。
つまり、いつオーダーしてもどのジャッジ技術者が作業しても、高品質で安定したプリント製品をお届けする事です。しかも他社より美味しいことは必須条件です。
階調感のジャッジ
ジャッジ教育において色調や濃度を教える事は比較的容易ですが、階調感を伝える事が難しいが重要なファクターです。
アナログプリントの階調感を体現してきた最後の技術者として教え伝える事が、私の使命だと決意しています 。
次回は11月下旬公開予定です