2019年3月号で「キャッシュレス化の波は写真業界にもとどくのか?」という記事を掲載しました。あれから一年経ち、まもなくキャッシュレス・ポイント還元事業が終了します。今回はフランチャイズチェーン店やコンビニなどを除いた中小企業にフォーカスして調査してみました。
まずは都道府県別の分布です。
2020年4月1日時点の加盟店登録申請数は約112万店、加盟店登録数は約108万店となります。そのうち、約98万店が中小・小規模事業者と、大多数を占めています。
上の図のとおり、人口1人当たりの加盟店数を都道府県別でみると東京、石川、京都、福井の順で大きくなっています。
石川県が第2位、福井県が第4位、富山県は第6位と北陸エリアが「キャッシュレス先進地」であることはご存知でしたか?
たとえば、福井県では2017年から県と市町が導入費用の3分の2(最大8万円)を補助する制度を実施していました。国は2019年度から導入への補助を実施しているため、それよりも早くからキャッシュレスの重要性を認知したことが普及した要因のひとつと言えるでしょう。
また、国内有数の観光地である石川県金沢市の金沢商工会議所では2019年春から地域の企業・店舗向けの無料セミナーを実施し、2019年10月の消費税増税に間に合うように早期の導入を呼びかけるなどの取り組みをおこなってきました。
北陸エリアの写真館様の中も、すでにキャッシュレス決済を導入されている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
次に、実際にキャッシュレス決済を導入し、国の「キャッシュレス・ポイント還元事業」に参加した店舗の【現場の声】を加盟希望店向けの資料からまとめてみました。
【現場の声1】北海道:スポーツ用品店
キャッシュレス決済比率は、約20%(7月から9月までの3カ月における平均)であったが、
10月はひと月で約40%となっている。高額商品が多いため、従来からクレジットカード利用者が多かった。10月以降、QRコード決済(売上金ベース)が、一定の割合を占めている(10月:7%、11月:14%、12月:8% )
【現場の声2】大阪府大阪市:写真店
10月より一部値上げに踏み切ったが、売上は10%強増加。ポイント還元への意識の強さが感じられた。ほとんど全てのキャッシュレス決済手段に対応しておいてよかった。QRコード決済の比率が高くなると予想していたが、実際は満遍なく利用されている。レジ周りのレイアウトを工夫したことで、オペレーションが改善され、業務を効率化することができた。
キャッシュレス決済の利用方法を理解しているお客様がほとんどで、質問などはなくスムーズに決済ができている。
【現場の声3】福岡県福岡市:小売業(ふとん)
キャッシュレス利用者は1回あたりの決済額が大きいので売上に効果がある。クレジットカード・電子マネーの比率が、 42%(9月)から52%(10月) に増加。・お客さんからQRコード決済の使い方の相談が多く寄せられ、店員が喜んで対応している。
【現場の声4】福島県いわき市:飲食業
インバウンド客に対する会計がスムーズになった。
【現場の声5】広島県廿日市市 宮島表参道商店街
商店街説明会をきっかけにQRコード決済を導入した。外国人はほぼクレジットカード払いで、1回の決済額が大きいため、端末を導入してよかった 。
【現場の声6】愛知県安城市:小売店(食料品)
ポイント還元事業開始前は1日の利用者数は1桁だったが、 事業開始後は2桁に増加。年配客もQRコード決済を使う人が 増えた。釣銭用の両替のために、銀行へ行く頻度が減った。両替には手数料がかかるので、キャッシュレス決済利用者が増えることで、 週に1度の両替で十分になった。
キャッシュレス・ポイント還元事業の公式HPの資料には上記のような「現場の声」が寄せられています。導入に対する手数料やオペレーション変更の手間は発生しますが、それ以上にメリットを感じている店舗が多いようです。売上UP要因になること以外にも、インバウンド客に対する会計がスムーズになる、釣銭の準備が最小限になる…などの効果もあることがわかりました。
国が実施している「キャッシュレス・ポイント還元事業」の申し込みは2020年4月末が締め切りとなり、消費者に対する還元も6月で終了します。しかし、今後もキャッシュレス決済自体は普及していくことが考えられます。公式HPでは登録加盟店を地図で検索することもできますので、一度ご自分の地域のキャッシュレス決済導入店を調べてみるのも、市場調査のひとつになるのではないでしょうか。
【データ出展・参考】
キャッシュレス・消費者還元事業ホームページ (※2022年4月現在サイトなし)
金沢商工会議所ホームページ
※ラボネットワークメールマガジン2020年4月号の記事を再掲