たくさん食べにいく:株式会社デコルテ 木下 令氏 #2

「フォトグラファーは料理人である」

写真はカメラがあれば誰だって撮れる。フォトグラファーは誰にでもなれる。
そんな時代だからこそ、本物の「料理人」を目指していくべき。

みなさん、ご飯を食べるのは好きですか?

私は朝ご飯を食べながらお昼ご飯のことを考え、お昼ご飯を食べながら夜ご飯のことを考えています。
今これを食べると次のご飯と被らないか…とか。

今回こうして文章を書かせてもらう機会をもらった私は、どうすればわかりやすく写真に対する考えを伝えることができるか、いろいろ悩みました。

なんせ同僚との会話でさえ、「何言うてるかわからん」顔をされる雰囲気があるのに、文字となるとより…

そしてたどり着いたのが、私の仕事のひとつでもある社内向けの研修においてよく使う表現でした。
それが、料理に例えた話し方。

いろいろ伝えることはありますが、なかなかうまく説明ができないことも、料理に置き換えたら伝わりやすいのではないかと、寝ずに考えたレクチャーの方法です。

「何をどういうふうに撮りたいか」を考えることが撮影において最も大切なプロセス

まず初めに、今回のお話は「頭に完成イメージ、撮りたい写真のイメージをしっかり持つ」ということが撮影において大切だと思うておりますよ という話です。

プロのフォトグラファーとして生計を立てている人が、撮りたいものを目の前にし、シャッターに人差し指を置いているとき、全体的、または絵の部分的にでも、撮影したいイメージを頭に浮かべているはずだと思います。

撮影しようとしているものが瞬間的な1枚でも、動かない景色のような1枚でも。
全くそんなイメージを作らないというフォトグラファーもいるかと思いますが、私は完全に前者です。

もちろんここに行き着くまでにも必要なスキルはたくさんありますが、撮りたい写真があるとき、まずは「何をどういうふうに撮りたいか」を考えることが撮影において最も大切なプロセスであると思っています。

そして、頭にあるイメージと目の前にある環境を、要素ごとにすり合わせ、整理していきます。
光はどうか、角度はどうか、露出はそれで良いか、構図やデザインはそれで良いか。脳内のイメージが持っている要素ごとに、落とし込みが始まります。

そしてシャッターを切る流れです。

この、頭の中にあるイメージ という部分は、つまり「インプット」と呼ばれることもあるかと思いますが、これをできるだけたくさん、そしてできるだけ質の良いものを入れておくことが大切である というのが今回のお話です。

現場で、その脳内にある引き出しから取り出したイメージを、現実世界からフレーミングしながら作っていきます。

撮りたいものを目にしてからシャッターを切るというこの作業フローが、1秒未満のときもあれば、1時間以上かかる場合もあります。

とにかく、フォトグラファーとして私が大切だと思っているひとつが、この「脳内の引き出しにどれだけイメージを入れているか」、つまりインプットだということです。

わかりますかね……。
お分かりの方も多いかと思いますが、これを私なりに伝え直したいと思います。

トライアンドエラーを繰り返し成長していくことが1流の料理人になる近道


「カレー」の写真だけを手がかりにあの摩訶不思議な食べ物を作ろうと思っても、カレーを食べたことが無ければ味もわからず食感も匂いもわからず、到底完成には至らないのです。

どうすれば良いでしょうか。

実際にカレーを食べ、何が入っているのか、どうやって調理するのか、どんな味なのかを知るということから始めるわけです。

そうでなければ、あの茶色のドロドロした食べ物を闇雲に調理をし始めても、到底あの美味しい料理に近づくことはできないでしょう。

何事も、目指すものがあるからこそ、そこにたどり着けるということです。

写真も同じです。
たくさん美味しいご飯を食べて、しっかり味わって、まずはインプットすることが大切だと思います。

その中でいろんな料理の味や、調味料の種類、調理方法などを知り、トライアンドエラーを繰り返し成長していくことが1流の料理人になる近道だと思っています。

結果、私はちょっと太ってしまいました。


次回は「アウトプット」のお話です。

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