スパイスの使い方:株式会社デコルテ 木下 令氏 #4

「フォトグラファーは料理人である」

写真はカメラがあれば誰だって撮れる。フォトグラファーは誰にでもなれる。
そんな時代だからこそ、本物の「料理人」を目指していくべき。

こんにちは、早くも4回目の時間がやってきました。

季節もだんだん暑くなり、本当であれば食欲が減り始める季節なはずなのですが、
「栄養を蓄えないといい写真も撮れない」 という独自の法に基づいた私の生活は、
冬も春も変わらず、ごはんのことを考えて24時間を過ごしています。


「レタッチという魔法」

今日お伝えしようと思うております内容ですが、レタッチという作業についてです。
最近では様々なカラーフィルターのプリセットや、ボタンひとつで星空になるなどの、
写真編集ツールが簡単にインストールできるようになり、そのフィルターでいわゆるオシャレな風味に写真を見せることができたりします。

すごい世の中です本当に。


実際私も自分で「色」に関するプリセットを数種類作ってみたり、星空まではいかないとしても晴れた空に変えるなど、たまに使用していたりします。
同時に、この部分で様々な危機感を感じはじめたベテランフォトグラファーの方も少なく無いような気がします。

今回は何が言いたいかというと、レタッチとは、そもそも写真がしっかりしていないと洗練された1枚にはなり得ないと、私は思うておるということです。

このレタッチツールという魔法は「自信」という強い武器を容易に与えることとなり、
世の中にたくさんのフォトグラファーを放出するに至りました。

簡単に色味などが変わり、容易に色味や雰囲気を変えられるボタンで、簡単に写真の雰囲気を変えたであろう写真でインスタグラムは埋まっています。
そこまで写真を見る力を持たない多くの人々は、ただ「映える写真」を載せるフォトグラファーの元に集まるようにもなりました。

新入社員の面接の場面で見る彼らのポートフォリオも、数年前と比べると大きな変化が見られるように思います。
よく見ると何が撮りたいのかわからない写真や、まとまりのないデザインの写真が、
フィルターによって「おしゃれでしょ」と語りかけてくるような。


確かに「自信」というのは撮影者にとっては大切なスキルでもあると思いますが、大切な部分が欠落しているフォトグラファーも多くみられるようになっています。

頑なに車にナビを付けず、「地図を調べて目的地まで行かないと道を覚えないだろう」と言い張るような、新しいものアレルギーのお爺にはなりたくありませんが、プロのフォトグラファーとしては、もっと「しっかり考えた撮影」ができるようになってほしいと切に思うわけです。

撮影した写真、完成した写真は撮りたかったイメージになったか、はたまた、ならないのは何故なのか。
シャッター前にイメージを持ち、シャッター後に現像やレタッチで、完成イメージに近づけていくという全体のプロセスにおいて、どの部分で変になかったのか。

技術屋として思うのは、まずはしっかり自分で考え、課題があればそれを攻略し、とにかくトライアンドエラーを繰り返すべきだと思っています。
それが真のスキルとなり、必ず新たな表現力に 繋がっていくからです。

一流フォトグラファーは一流料理人でもあってほしい

「レタッチはどうやってるんですか?」

この質問をよくもらいます。
その都度、もちろんできる限りのやり方を伝えてはいるのですが、その方がレタッチの方法を同じにしたとしても、そううまくいかないのではないか、とも思っています。

仕上げたい写真が、私の撮影しているそれと似たようなものであるならそれは有効かもしれませんが、私の写真を構成する核となる部分がレタッチ以外の部分にあると思っているからです。


とはいえ、写真にそもそも答えなど存在しません。学びたいものは学んで、自由に表現すればそれで良いのです。


でもその技をどう使うかという所が大切だと思うのです。
私の生きるブライダルの世界でいうと、どれだけお客さまのことを思って撮影をしているか ということです。


自分の持つスキルを自身のために使うわけではなく、目の前の特別な瞬間を迎えられた二人のために使えるか ということです。

んー・・・・・。

現代よく目にする写真に対するアンチテーゼでは無いのですが、まずはフィルターやレタッチに頼らない綺麗な一枚を現場で切り抜くスキルを持って欲しい、見抜く力を持って欲しいと思うわけです。



レタッチって、料理でいうと最後のスパイスのようなものだと思うんです。

イメージしてみてください。

洗練されたプリップリの白身魚の入った、とっても上品な味付けの老舗料理屋の透き通ったお吸い物の上に、そっと浮かぶ薄くて小さな熱で揺れる金箔を。

もし金箔がブワーっとかかってたとすれば、プリップリの白身魚も、三つ葉も、食べた人の記憶には金箔の印象しか残らないのではないでしょうか。

シンプルに素材の味わいを楽しめる透き通ったお吸い物に、そっと浮かぶ小さな金箔こそが、お吸い物を最後に引き立てるスパイスになっていると思うわけです。

一流フォトグラファーは一流料理人でもあってほしいと思うのです。

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