ラボ内での処理について:池田 博氏 #5

ラボに入稿された画像の処理

お客様から入稿いただいた画像データはお客様の発注時に「補正する」・「補正しない」を選択していただき、「補正する」を選択していただいた画像については補正を行います。
コンシューマ用はほぼ自動処理、プロ用は自動処理、手動処理の選択・併用です。ここでの処理は「カラーコレクション(色濃度補正)」と言われるものでエンハンスソフト(エンハンサー)というものを利用しています。

エンハンスソフトはメーカー製のものを使用したり、ラボで内製しているものを使用しています。メーカー製のものであっても、ラボ生産用に最適化してもらったり、ラボ内で独自に補正用パラメータを作成したりしており、常に改良を続けています。

ラボでは古くから独自の出荷基準(といっても万人に受け入れられるであろう標準的な補正基準)があり、それに合わせてチューニングを行っておりますが、お客様毎に好みの色の方向があり、お客様に合わせて補正することも多々あります。

ラボの基本は、「印画紙にきちんとプリントする」ということであるのですが、カラー印画紙の色域はそれほど広くないので、どうしてもデジタルカメラで撮影し、ディスプレイで見た画像とは異なってきます。また、同じ画像データからプリントしたカラー印画紙とインクジェットやゼログラフィーのプリントは色材の違いやプリンタ内部の画像処理方法の違いから色は合いません。

カラーコレクション(色濃度補正)とカラーグレーディング

これまでも書かせていただいた通り、狭い色域の(主として)印画紙で良い色を表現するためにラボでは色補正を行っています。
もともと、sRGBに始まる色空間(規格)もディスプレイの蛍光体を基準とした色域となります。現在では、sRGB、AdobeRGB、Display P3等の規格はどんどん色域が広くなる方向になっており、それに対応する様にディスプレイの色域が広くなってきたり、印刷でも蛍光色が使えるようになってきたりしているので、お客様からはもっと彩度を上げたプリントが欲しいという声も聞かれます。

ラボではあくまで印画紙を基準として印画紙に合わせた色域範囲内での色補正を行っているため、印刷(やディスプレイ)の様な自由度のある色が出せないのも事実です。

印画紙にこだわる理由の一つが、保存性です(次に階調性でしょうか)。通常の印画紙は通常の環境でアルバムが本棚の中で保存されている様な状況(暗退色と言います)では、200年以上持つようになっています。通常のインクジェットや印刷ではほぼ無理で、特殊な印刷や後加工を行う必要があります。

一方、最近はお客様から彩度の高いプリントを望まれており、その理由はディスプレイやインクジェットの色域だけではなく、画像ソフトの影響があると考えています。映画(動画)の世界では以前からある「カラーグレーディング」という手法が静止画にも普及してきたことがあると考えています。「カラーグレーディング」はなかなか良い表現が難しいのですが、色濃度補正の後に印象を変えるための演出の意味合いが強いと考えています。
もちろん、この様な手法が使えるのは画像がデジタル化された恩恵です。

Adobeは2012年に動画ソフトのAdobe Premiere Pro(Adobe SpeedGradeだったが、その後Premiere Pro内のLumetriカラーに吸収)にカラーグレーディングを導入しましたが、静止画ソフトには2020年にAdobe Lightroomに導入され、色補正(カラーコレクト)以上に写真家やデザイナーが意図した画像補正(演出)が簡単にできる様になりました。

最近のスマホに入っているコンシューマ用の画像処理ソフトやPC用の画像処理ソフトは従来の色補正の範囲を超えて、色々な好みの色付けができるカラーグレーディングにシフトしてきており、その色をプリントに出したいという要望が出てきていると考えています。

ユーザとしてのラボ

(本来ではここに書くべきことではないのですが、個人的な独り言としてお許しを・・・)
我々、写真のラボは材料メーカーでも機器メーカーでもありませんので、現在入手できる材料・機器の中で最良の出力・商品をお客様に提供できるよう、日々検討を続けております。
もちろん、材料メーカーに依頼して要望を聞いて頂いたり、特殊な対応をして頂いたり、機器メーカーに独自の機器を製作していただくこともあります。
特定のコストで調達を行うので、もちろん完璧なものは入手できませんし、おそらく完璧な材料は存在しません。

ラボでも特に苦労しているのは、購入している材料の突然の生産中止、原料変更、品質のゆらぎや(ちょっと言葉は悪いですが)欠陥です(材料メーカーは出荷基準と言っていますが・・・)。
大事なお客様にお渡しする商品に少しでも良い商品をお届けするため、都度生産最適化や生産途中・出荷時での検品を行っています。その中で、もともとの材料が原因となっているものも多々あり、ラボとしても非常に対応が難しいものがあります。

お客様からお金を頂き商品を提供しているのですが、その提供する商品の材料はメーカー等からラボも購入しています。

この様な状況も頭の片隅にでも置いておいて頂けるとありがたいです。


5回に渡って連載させていただきましたが、この様な文章を書くことに慣れておらず、散文的になってしまいました。このLablogを読んで頂いている方々にほんの少しでも参考にして頂けたら幸いです。

ご覧いただきありがとうございました。
今後とも株式会社ラボネットワーク、株式会社ラボ生産をよろしくお願い致します。


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