零細企業のこれからの会社経営:山下 亮氏 #6

この連載で自分が経営者になった経緯は書かせていただきましたが、弊社は同族企業ではなく、元々普通に雇用された社員であった私が社内ベンチャー的に始めた今のサービスが起動に乗り、その後既存の取引きが消滅したことにより代表を交代して今に至ります。


零細企業は同族経営が多いので、継承問題が悩みの種だと思いますが、完全にメーカーの下請けという元の仕事が消滅したこともあり、仕事の軸が変わることに対応するため交代し、現在は会長として対メーカー対応を担当してもらっています。

経営側に入って13年、代表取締役になり5年が経ちましたが、その間社内の問題も沢山経験してきました。

辞めた社員から残業代の未払いで訴訟も起こされましたし、パワハラとのことで家族が乗り込んできた事もあります。精神的に病んでしまった原因が会社にあると言われた事も一度ではありません。

しかし私はずっとこれらの問題は「いつか会社が安定したら解決する」と思っていました。

まずは経営を安定させる、簡単に言うと”儲かれば” と思っていました。

しかし赤字になったり黒字になったり、儲かっても緊急の入り用があったり。心配は尽きず儲かっているって一体どの時点を言うの?と分からなくなってしまいました(笑)

訴訟などで疲れきってしまった私は初めてちゃんと社労士事務所と契約することにしました。

これも「儲かってからリスト」に入ってはいたもののまだやって無かったことの一つでした。

女性の社労士さんが社長で、月に一度面談に来てくれることが選んだポイントでした。

そこで月一で「働くということとは?」という、超基本的なことを初めて学び、新しい就労規則を制定しました。


それまで私は新しいサービスや、脱下請けなど、外にばかり向かい、外が安定すれば中も安定すると考えていましたがそれは間違いだと教わりました。

昔、親によく言われました「よそはよそ。うちはうち。」他所がやってないとか、関係ない。

やらないといけない事はやらねばならない。

そこで約2年掛けて会社の労務環境を完全に白にすることにしました。因みにこの2年はコロナを含め過去10年に負けない程大変な時期でした。

当時社員達は遅くまで残業していました。

昔完全歩合制だった名残りがあり、個々で勝手に予定を組んでいるのでコントロールがしにくかったのですが、それを段階的に切り下げていき、今では管理職の一人を除く全員がほぼ定時に退社しています。その者も上限は20時です。

土日祝は完全に休みとし、休日出勤はありません。新人育成はもとは古参の技術者が自らも業務をおこないながら新人を育てる習慣でしたが、カリキュラムを作りその間は教育係はそれに専念する方式にしました。それによりトラブルも減り、定着率も上がり、通常3年程掛かると言われていた売上げを半年から一年で上げるようになりました。

会社の近くに住む人を優遇するために家賃補助もかなり好遇しています。私は通勤時間が長いと会社で起こったネガティブな問題を悲観的に考えてしまうと考えています。会社でトラブルがあっても10分くらいで家に着けば気持ちも切り替わります。朝も憂鬱な気持ちで長い時間通勤するより、パッと着いてしまえば何となく1日を乗り越えられる事もあるでしょう。面接でもそれを伝えています。

他にはお昼はこちらが指定している健康的なお弁当を半額で提供、勉強用の図書などは全額会社負担、提案書を提出すれば採用に関わらず買い取る、3人以上の懇親会は会社負担など。

儲かる前にどんどん実現させていきました。


これは社員に遠慮してやってる訳ではなく、こういう環境は零細企業でも自分達で作ることが可能だと夢を持って欲しくておこなっています。

結果論になりますが、実施後、下請け時代の社員がほぼ退社し8割が入れ替わりました。平均年齢は30歳前半に以前より10歳程下がりました。

そして利益は過去最高になりました。このコロナ禍で仕事量は激減していますが、利益率が上がったためです。

“社員に変化を求めるなら、会社が変化することが先”。これがこの経験から学んだことです。

零細企業は浮き沈みが常です。

でも、沈んでいる時でもやれることは意外とあります。まずはその姿勢を社員に見せることで、更に本当に沈んだ時、彼らは力を発揮してくれると思います。今がその時のように感じています。

零細企業がそんな大企業みたいな労務環境は無理。儲かってから、と以前の私は思っていましたが、やっと自分の考えを変えることが出来、会社もすこしづつ変わってきました。

小さな運命共同体である零細企業が、これからも生き生きと存続するために「常に考える。なぜだろう?から仕事は始まる」を実践していこうと思っています。


全6回に渡って連載させていただき、今回で最終回となります。

長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

それでは皆様、どこかでお会いしましたら気軽にお声掛けください。ありがとうございました。


※ラボネットワークメールマガジン2021年7月号の記事を再掲

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